「一緒に働いている今の若い人達によく聞かれることがあるんだ。『川添さん、どうして僕がこの仕事をやるんですか? この仕事はいったいどういう意味があるんですか?』とね。『ヘアー』をやってる時、僕も同じことを親父に開いたことがあったよ。親父は、『いいから黙って言われたとおりのことをやれ』としか言わない。それ以上何もしやべろうとしない。それである日、呼ばれてこう諭された。『象郎、日本には体得するという学び方がある。たとえば日本舞踊の世界を考えてみろ。四つや五つの小さな女の子に、恋の仕草や艶っぽい踊りを何度も何度も稽古させる。何年も稽古してるうちに、その子も年頃になって人を恋する気持ちが分かってくる。その時、舞台の上で気持ちと踊りがひとつになる。ある時期が来ればやってることの意味は分かる。人が体で覚えたことは、その時期が来れば、その人に才能があれば必ず分かる。それまでは黙って型を覚えていればいいんだ』。自分でプロデュースの仕事をするようになってから、親父が言ってたことが、体のなかにしみ込んでることがよく分かった。結局、自分のやってる仕事も親父の仕事の延長なんだな」(アルファ・レコード制作部長・川添象郎)
— 野地秩嘉・著「キャンティ物語」(幻冬舎文庫)より
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1 year ago